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近所で建築中のマンション「ル・サンク小石川後楽園」の動向 | 2016-01-06 | 調べ物

家の近所で建築中で、分譲は完売済みのマンション「ル・サンク小石川後楽園」が、完成直前で建築確認を取消処分となった。かなり珍しい事態で、どういうことだろうと、勉強がてらメモにまとめる。




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住まいがある、東京都文京区小石川。
樋口一葉や夏目漱石などが生活していたエリアにも近く、裏道などに下町に似た風情が残る街。

ここ10年ほど、古い家が取り壊され、マンションに建て替わるところが増えている。
そんなマンション建設現場の一つで、2015年12月上旬に、ビックリするニュースがあった。


(朝日新聞)
完成直前のマンション、建築確認取り消し 東京・文京


(日経アーキテクチュア)
完売マンションの建築確認を取り消し


NIPPOの完売物件建築確認取り消し「ル・サンク小石川後楽園(107戸)」文京区

このマンション建築現場の前は、毎日のように歩いていて、建築の様子を見ることもあった。

建物はかなり出来上がっていて、次の春ぐらいに入居開始かな、と思っていた矢先のニュース。

設計・計画段階ならわかるが、ここまで出来た状態での許可取り消しというのもかなり珍しい事態らしく、一体何があったのだろうと、勉強がてらメモにまとめる。


この物件の主な経緯


この物件の主な経緯を調べてみた。
見ると、かなり昔から、許可と取消の攻め合いをしている。


2001年   都市銀行の社宅跡地(1360坪)を都市基盤整備公団(現:UR都市機構)が購入
2003年10月 競争入札により、NIPPO/神鋼が共同で購入(坪300万円×1360坪:45億円)
2004年07月 建築主らがTBTC(株式会社東京建築検査機構)に対して建築確認申請
2004年8月 TBTCからの照会に対して、文京区長が「開発許可は不要」と回答
2004年11月 付近住民が東京都建築審査会に審査請求
2005年6月 東京都建築審査会の裁決により建築確認取消し
(理由)
①自動車車庫出入口の道路(堀坂)幅員が6mに満たない。
②西側メゾネット住戸が一の建築物に当たらない。
2005年07月 建築計画のお知らせの標識の取り下げ
2007年10月 開発事業のお知らせの標識が設置される
2008年07月 文京区が道路幅6メートルへの拡張を計画
2008年08月 NIPPO・神鋼が文京区長に対して開発許可を申請
2009年03月 文京区長が、道路幅6メートルへの拡張の開発許可処分
2009年08月 付近住民が審査庁に開発許可処分の審査請求を提起
2009年09月 審査庁が開発許可審査請求を棄却するとの裁決
2010年04月 近隣住民が、文京区長による開発許可、東京都開発審査会による審査請求棄却裁決等の取消しを求めて東京地方裁判所に出訴(堀坂第1訴訟)
2010年06月 第1回公判、原告代表の意見陳述
2011年07月 裁判所が文京区に敷地の原告土地との高低差の調査を行うことを命じる
2011年07月 文京区都市計画審議会、絶対高さ制限を定める高度地区の指定(素案)を審議。
小石川二丁目の住居系地域は高さ制限22m。
2011年10月 文京区提出の現地調査図面で、2mを超える切土の無審査が発覚
2012年02月 堀坂第1訴訟第9回口頭弁論、裁判長が文京区に釈明を求める
2012年04月 堀坂第1訴訟第10回口頭弁論、文京区が答弁を全面変更
2012年07月 事業者が株式会社都市居住評価センターに対して、建築確認を申請
2012年07月 都市居住評価センターが建築確認処分
2012年09月 付近住民が東京都建築審査会に審査請求
2013年02月 工事開始
2014年07月 マンション販売開始
2015年04月 マンション完売
2015年11月 東京都建築審査会が建築確認を取り消す裁決

出処元・詳細の経緯は、以下のWebより抜粋。
小石川二丁目マンションの無秩序な開発・建築を考える会 (仮称)

(参考)
開発許可:市街化区域において開発行為(建築物を建築する目的で行う土地の区画形質の変更)を行う場合は、許可が必要。

建築確認:建築するには、敷地・用途・建ぺい率・容積率・高さなどについて、建築工事を始める前に建築主事の確認が必要。

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巨大マンション建設反対住民との対立


そもそも、近隣住民は「巨大マンションの建設反対」をしていた。文京区内には、ここ以外にも、他にも同じような、地元住民と新築マンション建設を敵対しているところがある。建築後も「マンション反対」の旗を掲げていたりする。


判決の出た、東京都建築審査会 口頭審査議事録(第1254回)の冒頭部分を見ると、争っていた論点がわかる。

ポイントは三つ。
「事業者と文京区の対応」
「開発許可と建築確認のあいだで生じた欠陥 法令上の不備」
「建築確認のずさんな審査の問題」

この議事録を見ていると、近隣住民は、かなりご立腹している様子もわかる。

建設事業者が、近隣住民の理解を得られないまま、強硬に工事を進めてしまい、最終的に「避難経路の不備」という、重箱の隅をつつくようなところで、建設確認の取り消しとなり、工事自体をストップせざる得ない状況になってしまった。すでに建物は、ほぼ出来上がっている状態なのだが。。。


さらに、仮に、建築事業者が、避難階の問題を何とかしても、再度建築確認を申請すると、今度は高さの制限に引っかかる。当初は高さ制限をクリアしていたが、その後高さ制限は22メートルとなった。この物件の高さは27メートル。上のはみ出た階を削るというわけにもいかない。

「にっちもさっちもいかない」とは、まさにこういう状態。
小説のような話が、現実に起きてしまうから、恐ろしい。


建築事業者も災難だったが、一番の災難は このマンション購入者。
このマンションは、いわゆる高額物件で、それなりのステータスの人たちが、夢を抱いて購入したと思う。
この購入者たちも、いったいどうなってしまうのだろう。


また、よくわからないのは、本来中立的な立場が求められるはずの、文京区の対応。
経緯を見ていると、この建築事業者をサポートする側にまわり、住民側には親身に対応してないように見える。

たとえば、この建設予定のマンションの駐車場が面している道路が狭すぎるという問題が発覚した際には、区が道路幅6メートルに拡張を計画したりする。
ちなみに、この道路は、本当に狭い。サブの道路としてはいいが、メインの道路には使えない。

このマンションの世帯数は約100戸。
過疎な村ならわかるが、この100戸が入居したとしても、文京区として大幅に税収入等が増えるわけではない。

仮に、世帯年収1000万円の家庭が100戸入居したとして、区に入る住民税は 約50万円×100世帯=約5,000万円
それ以外にも固定資産税なども入る。そして、居住することで、文京区内の消費活動も行われる。
ちなみに、文京区の財政収入は、年間で約800億円。

そこまでして、このマンション建設をサポートする文京区がわからない。
うらでこっそり、この建設事業者と区の担当者の間で、何か金銭的見返りでもあるのではないか、と思ってしまう。


文京区の再開発


文京区の再開発といえば、
文京区では、後楽園駅・春日駅前で、「春日・後楽園駅前地区市街地再開発」という、大々的な開発計画が進んでいる。

今までの古い民家を何軒か取り壊して、マンションを作るというレベルではなく、雑居ビルなども壊し、かなり広範囲な開発地区となる。

一帯は閉店のお知らせだらけ。
50年続いた「彦坂牛肉店」も閉店となってしまった。

2015年末から、対象エリアの飲食店などのお店が次々と閉店していっている。中には、この地での営業歴が長い名店なども閉じてしまった。
この再開発は、経済的には大きなメリットがあるだろうが、文化的にはデメリットも大きい。歴史や文化というのは熟成期間が必要。

味っけのない街になってしまうんだろうな。


*2016年1月追記
噂によると、この問題となったマンション「ル・サンク小石川後楽園」は取り壊しになるらしい。


*2016年1月追記
文京区内では、以下の案件が問題となっているらしい。中には、あの「春日・後楽園駅前地区再開発」も。

  1. 湯立坂脇マンション問題・文化財(銅御殿)
  2. 関口の目白坂計画
  3. 堀坂・六角坂の開発
  4. 千駄木NTTサーバービル
  5. 礫川交流館の建て替問題
  6. 春日・後楽園駅前地区再開発
  7. 順天堂キャンパスホスピタル再編計画
  8. 小日向プロジェクト(トヨタレクサス空中権売却)
  9. 植物園脇道路拡張問題


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